
岡 山 の ば ら ず し
江戸時代、備前岡山の藩主池田光政候は、質素倹約を奨励し、「食膳は一汁一菜とする」というお触れを出しました。「それなら、すしの上にうまいものをぎょうさんのせよう。それでも一菜だ。」と町人たちは魚や野菜をすし飯に混ぜ込み、これに汁を添えて、体裁だけは一汁一菜としました。
こうして、海の幸、山の幸を盛り込んだ豪勢な「一菜」が岡山の味となり「岡山ずし」あるいは「祭ずし」として現代に受け継がれています。豊富な瀬戸内の海産物と、温暖な気候風土から生み出される農産物が、豪勢なばらずしづくりの伝統を支えたといえるでしょう。
ばらずしは、この地方の「ハレ」の食事として、正月、お日待ち、節句、彼岸、シロミテ、盆、結婚式、出産、棟上げなど機会あるごとに作ります。家によって独特の味があり、季節によって具の取り合わせも変化します。
作ったばらずしは重箱などに詰めて、近所や親類に「おすそ分け」するのが風習になっていますので、重詰めや盛りつけにも凝っています。上に飾る具を底にも敷きつめて、いただいた方が重箱をポンとひっくり返すと、豪勢な具が表面にも美しく出るという心憎い気配りが、岡山ずしの伝統、岡山人の県民性をあらわすものとして広く知られるようになりました。
人と人、家と家とのコミュニケーションで、お互いにばらずしをあげたりもらったりするうち、すし作りの腕も向上して、名実とも日本一の座を獲得しています。また欧米でのすしブームによって、日本食は戦後の「スキヤキ、テンプーラ」の時代から「スシ」の時代となり、なかでもばらずしはでき上がりの美しさから「ビューティフル、ファンタスティスク」と賞賛されて、国際的に通用する日本食として定着しはじめています。
すし飯は、だし昆布、塩、酒を入れて、少し固めに炊きあげます。具の中の主役、錦糸卵は、鮮やかな黄色にするため、卵黄を半量ほど多く加えてから溶きほぐし、薄焼きにします。レンコン、ゴボウ、カンピョウ、シイタケは、それぞれの味をそこなわないように別々に煮ます。イカ、エビは塩ゆで、アナゴは照り焼きにします。
そして春のすしになくてはならないものはサワラ(鰆)です。文字どおり、春がサワラの旬ですから、これを三枚におろしてそぎ切りにし、塩をふって二時間ほどおきます。このサワラを三十分ほど酢にひたし、身が白くなったら取り出して上置きにします。
四月、五月になってフキ、タケノコ、エンドウなどが出回りはじめるころには、これらを使って季節の香りを盛り込み、木の芽を飾ります。
秋には、いろいろな茸(きのこ)を使います。なかでもマツタケは秋祭のときにつくるばらずしには欠かせない材料です。白いものは白く、青いものは青く、それぞれ配色よく盛りつけます。
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