ツナシずし・素焼きの生姜醤油

ツナシずし・素焼きの生姜醤油


ツナシずし・素焼きの生姜醤油  備前、美作、播磨の境にある吉永町八塔寺は鎌倉初期、源頼朝が再興し、一里四方を聖域と定め、山岳仏教の盛んだったころ「西の高野山」とまでいわれていました。時代が下がるにつれて衰微し、八塔寺の堂塔はさびれるにまかせてきました。
 この地は交通の不便な土地柄だけに古い習俗が伝えられ、今に残るおもてなし料理が脈々と伝わっています。それがサバずしやツナシずしで、寒い冬ですと一カ月も保存がきき、海に遠い八塔寺では、来客用のおすしとして作られてきました。
 かつて因幡の塩サバを林野から行商が背負ってくるのを買って、サバずしを作ったのが始まりです。昭和の初めになって、備前地区との交流が始まり、無塩のツナシをトロバコに入れた商人が、売りに来るようになりました。その結果、瀬戸内のツナシを容易に手にすることができたし、ツナシずしが作られるようになりました。ツナシは方言で、一般にはコノシロと呼ばれています。この魚は秋が句で、お祭のときにお客へのお土産にし、稲刈りのときの保存食としても重宝しました。ツナシずしは作ってから二〜三日が食べごろですが、好きな人はカビがでるようになってからがおいしいといいます。
 ツナシは、背の方から開き、腹の黒いマクなどをきれいに洗い、塩をしてしばらくおき、酔洗いをして、酢、塩、砂糖の調味液に半日以上つけておきます。すし飯は、米九、餅米一にだし昆布、酒少々を入れて一割増しの水で炊き、ッナシにすし飯をつめて、専用のすし桶に次々に並べて重石をします。
 一方、寄島沿岸では定置網にかかるツナシは、魚獲期間が長く、量も多いので家庭料理に使われます。
 一般的な料理方法は焼き魚です。腹をさかずに丸のまま姿焼きにし、生姜醤油やあっさりとダイコンおろしで食べます。焼くときに脂がジュウジュウ音をたてて流れおちるほどですが、その割に淡白な味で、焼きたての熱いうちに食べるツナシの味は格別です。  また、身が薄い魚なので、じかに塩をぷるより、たて塩(塩水)につけた方が塩が平均にまわります。小骨が多いので酢につける時間は身が自くなるまで長目にします。