ハエの番茶煮

ハエの番茶煮


ハエの番茶煮  御津郡建部町は、その中央を旭川が貫通し、昔は農業が中心でしたが、現在では温泉のある町として知られています。ゆるやかに流れる旭川の河原には、各地から訪れる釣り人の姿が絶えることなく見かけられます。このあたりで、よく釣れる魚はオイカワで、岡山では「ハエ」と呼ぱれている魚です。  岡山県では県下のどの川にも分布していて、たくさんとれます。地元の人たちは、このハエを焼き、乾燥保存していろいろな料理に利用してきました。
 十一月中句を過ぎ、寒くなってくるとハエは餌を食べなくなり、川の魚独特の臭味も少なくなって脂ものり、おいしくなります。
 また、川の魚は一般的に体が小さい割りには骨が固いものですが、ハエは骨が柔らかく、から揚げなどにして食べることができます。今の建部町に住んでいる人のうちでも、お年寄りの人が得意とするハエ料理は番茶煮です。
 このハエの番茶煮は、特別の材料が必要なわけでもなく、手近に手に入るハエと番茶で作る日常のおかずとして、長く親しまれてきました。素朴なものですから、祭や行事には便われませんが、骨ごと食べることができますので、カルシウムの摂取などに大変重宝していました。
 ハエの調理法についてご紹介しますと、川からとって来たら、すぱやくはらわたをしぼり出し、塩でハエをたたみます。そのままニ〜三日つけてからとり出し、洗ってご二十センチメートルの竹串でつき通して吊します。天日でしっかり乾燥させて、からからに干して虫もつかないような状態になったら湿気のこないものに入れて保存します。
 生の状態のものをそのまま煮る場含もありますが、この地方では、一次加工をしたハエを使って番茶煮を作ることが多いので、乾燥させたハエで作る場合についてお話します。
 まず、厚手の鍋にハエを大きいものから順に並べて入れ、煮立てておいた番茶をたっぷり注ぎ、鍋を火にかけます。一日かけるくらい、じっくりと番茶で煮て、充分骨が柔らかくなったら、加える砂糖と醤油の全分量の三分の一を加えて充分煮、次の三分の一を加えて充分煮るというように、徐々に味をつけていきます。汁が少なくなったら、ごく弱火にしてハエに残り汁をからめるようにして仕上げます。  ハエの甘露煮を作る場合は、途中までは番茶煮と同様です。
調味料を全部加えてよく煮ると、汁けが少なくなりますが、このときに水あめを加えて汁と水あめのタレが、ハエにからみつくように煮上げるのが甘露煮です。
 また、ハエの一番おいしい時期はやはり冬で、寒バエが四季のうちで一番おいしいということです。この地域に伝えられるこのほかのハエ料理としては、ハエの昆布巻きや、サンショウ味噌の田楽などがあります。